TPP大筋合意と日本企業の課題

TPPの大筋合意の可能性が高まっています。

韓国に先んじられたアメリカとのFTAとしてのTPPという側面。

TPPが締結することで、プレッシャーを与え、交渉が加速するであろう日本EUのEPA、アジア地域のRCEP。日本にとってはTPPは通商上、無くてはならないものです。

ただ、知っている人はおわかりになると思いますが、TPPが締結した=関税が無くなると言うことではありません。

TPP域内で生産されたと証明されたものにその関税減免の恩典が与えられるのです。

また、このTPPは日本の農林水産市場の関税削減(関税が今まであまりに高すぎた)と引き替えに、工業生産品を日本から輸出することに対して関税がなくなるというバーター取引でもあります。

叢林水産品の関税低減は、それ自体が産業を見限ったことにはなりません。その国にはその産業を改革・育成することが可能です。それ故に、日本政府は農業の大規模化を図ろうとしています。

工業製品はどうでしょうか。

経団連や経済同友会のような組織がTPPの推進を訴えるのは当然のことですが、私が気にするのは、先に申し上げた域内生産されたという証明が企業によってちゃんとやれていないこと。それも数が少なくないことです。

証明がちゃんとやれていない企業は、相手国から証明根拠を求められた時、ちゃんと証明できません。そうなると減免してきた関税を支払うように、その商品の輸入者(ここが鍵です)セーブできた関税を払わねばなりません) そうなるとさまざまなことが起こります。当然輸入者と日本企業のビジネスは関税分の補償問題から、ビジネスの継続問題になるでしょうし、税関ではより厳しくなり、通関に時間がかかるでしょうし。悪質ならば国家間の問題にもなりかねません。

私はEPA(FTA)の活用方法の指南をコンサルティングしていますが、その証明が間違ってたり、不十分だったりすることが多いのです。最近は、その活用を指南する前に、FTAのルールである商品の原産性を監査することを行っています。

昨今では東芝、フォルクワーゲンが「不適切なこと」を行って、大きな問題となっていますが、これは十分大きな問題です。コンサルティングですから明かすことはしませんが、コンサルティングしてきた企業で問題ある形でのFTAの活用をして(ある意味結果的に違法に)セーブした関税は100億円をくだらないのです。

今までの日本のFTA(EPA)は、原産性の証明書を第三者(日本商工会議所)が発行しています。ただ、その証明が正しいかどうかは制度上100%チェックできません。(日本商工会議所はできるだけ問題ないようにサンプリングしてその正当性を確認しようとしていますが、全数は無理です)

今度のTPPはアメリカがメンバーです。まだ詳細は発表されていませんが、いわゆる自己証明という企業が自分で証明書を発行できるようになるのです。これは企業にとっては大変楽に見えますが、実はそうではありません。ちゃんと証明しなければいけないのですが、その証明をチェックする組織がない。場合によっては、証明なしに企業が「証明書」を発行できる。

この自己証明はすでにオーストラリアで導入されています。そのオーストラリアへの輸出で自己証明を使った大企業を知っていますが、その企業は証明を全くせず、課長が「証明書」を作り上げ、はんこを押して輸出してしまいました。訴追を受けたらどうなるでしょうか。

TPPは企業にとっても大きな可能性をもつ協定であるとは思います。しかし、今一度コンプライアンスという観点から体制を組まない限り、大きな爆弾になる可能性があることを企業の経営陣は考えるべきです。

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